
本日は同業の柔道整復の先生向け。専門用語ばっかりでお送りします。
且つ、今週は怪我・外傷をメインに取り扱っていきたいと思っています。
さて、柔道整復の保険の適応疾患とされる「骨折」「脱臼」「捻挫」「打撲」「挫傷(肉離れ)」。
私が柔道整復師なりたての頃に挫傷(肉離れを含む)という文言が明確に付与されました。
ただ、「それ一緒にしていいの?」とも思う所があります。
じゃ、筋肉の損傷に対し適切な言葉があるかと言われると適切な日本語無くない?ともなります。
平成5年頃、柔整理論の第3版に「軟部組織損傷に関する考え方の整理」を柔整学校協会が行っています。
関節構成支持組織の損傷を「スプレイン(Sprain)」
関節運動機構である筋腱単位の損傷を「いわゆる捻挫」から「肉離れ(筋腱の断裂:Strain)」と改定されたわけです。
じゃぁ、打撲・挫傷は?となると過去には
打撲「打ち身と言われる単純な皮下損傷(5P徴候)」
挫傷「打撲傷よりも強度の損傷をいい、筋肉の挫滅(皮膚壊死、末梢神経障害、発熱等一般症状)を指している。」とされていました。
肉離れが挫傷?となりますよねぇ…。
何故挫傷に肉離れが内包されたのか。
その辺りは私が会ったこともないのに信奉している故・菅原勇勝先生がこのように書かれています。
――ただ、一般災害・労働災害等その打撲損傷の概要が変容し、柔整外来への挫傷受療率が多くなり、その施術内容が社会的に認容され、国の医療資源として担保されるだけに柔整の医療施術の水準が向上したという結果、「筋腱の断裂(肉離れ)」に「挫傷」が包含し通達されたものであることに忘れてはならない。
byストレイン・カルテマニュアル(菅原勇勝)
ですので、挫傷と言う用語にこだわり、筋腱の断裂を何も考えずに「挫傷」と説明してしまうと、施術録にも「打撲や転倒があったんか」とされてしまうわけです。
真実として打撲も衝突も転倒もしていないのに筋肉が痛むのは確かに「挫傷」で請求する形にはなりますが、上記の理由をきちんと理解した上で説明できるか否かは保険者への説明も含め柔道整復師として必要な知識ではあると思います。
逆なんです。肉離れがあるから「挫傷」で請求するわけです。
それについては、平成9年に厚生省からきちんとした説明が出ました。
ア 支給の対象は,介達外力による筋,腱の断裂(いわゆる肉ばなれ)であって柔道整復師の業務の範囲内のものとすること。
なお,打撲及び捻挫と区分する必要があることから,支給申請書に記載する負傷名は挫傷として差し支えないこと。
最終的に何が言いたかったというと。
肉離れ=挫傷ではないという事をしっかりと理解しておきましょうということです。
当時の先生方が必死に守ってくれた言葉が「肉離れ」だったわけです。
別に挫傷を守りたかったわけではなかったと思います。
最近はマスメディアでの整骨院・接骨院叩きも収まってきた感はあります。
ただ保険者の支払いに対する確認は厳しくなっているのは変わりません。
償還払いのみにするという話ですしね。
一部の悪い方々がなんでもかんでも保険で請求していたツケをまともな方々が損をするのはどうかとも思っていますが、この辺りの説明が出来ずに請求していた方々も居られると思いますので…。
もう最近では「亜急性」の文言まで削除されたこの業界。もう少し上の方々が頑張ってほしいところです。
それでは良い一日を。